乳がんのことを喋る、それは不安が無くなったから?

 今日は、パンのお届けの日。「午前中にお届けします」と云うことで、家事が済んでから車で適当に出かけることになります。出かける先は、ここから車で10分ほどの以前住んでいた町です。だから、住んでた町から離れても全然そんな気がしません。と云うか、パンのお届けが無くってもよく行くところです。銀行のATMも、スーパーでのお買い物も、大好きな珈琲屋も全部そこにあって、住まなくなってもそこはわたしのホームグランドです。かな?

 今日はお届けの途中で、そこを歩いている人の顔を見て、思わず車を止めました。以前のご近所さんでした。住むようになったのも一緒で、子供の年頃も一緒で、年齢も確か同じぐらいの彼女です。

 歩いていたのは、お孫さんの運動会を見に行っていたらしいのです。車に乗ってもらってお家まで送りましょうと思ったのですが、1時間ぐらいなら時間あるのよ、と云う事なのでそれではお茶でもと、大好きな珈琲屋に行くことにしました。

 「ヘアースタイル変えたの?」・・・そう訊く彼女に、乳がんのこと話しました。多分、車の中から彼女を見かけた時から、わたしはもう話したかったのかも知れません。手術から以降、最初の頃はそんなことはありませんでした。必要最低限の人限定でしか話したくなかったのです。あの頃は不安で誰かに打ち明ける余裕もなかったのかも知れません。だからきっと今はもう不安が少ないのだなぁと云うことに気付きました。

 話をすると、「そんな明るく言ってるけど、きっと大変だったでしょ」って言われて、そうだったのかも知れないと、また気付きました。彼女は長い間姑さんの介護を続けています。仕事も辞めて、今はもう病院やらその他姑さんに合わせた日課になっています。だから、「大変なのは、病気の人本人よりも周りで世話をしてる人や応援をしている人だと思うよ」と言いました。

 「でも、病気の人本人が一番苦しいんだもんね」と、優しい彼女です。「そんなことないよ・・」「わたしは全然大丈夫だったよ。いつも応援してくれる声がそばにあったから。その声でここまで頑張れたようなもんだよ。これは絶対、一生忘れることはないと思うわ」ときっぱり言うことが出来ました。

 「それとね、今年は震災があったでしょ。不謹慎だけど私はそのことですごく救われたの。知り合いの方はいないんだけど、あれだけのことを想像したら、こんな当たり前のように手術も治療も出来る自分がめちゃくちゃ恵まれているし、ありがたすぎるわ。」と言うと、深く頷く彼女でした。

 これまで、ただのご近所さんで話しこむということまありませんでしたが、今日はよく喋ってしまいました。今度、引っ越した先の今の家に遊びに来てくれるそうです。

 不安が取れていくそしてこの先、わたしは笑顔で何を考えよう?